空飛ぶ映画レビュー

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映画『クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』の感想 見終わった後全ての子供たちが愛おしくなる

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引用:https://www.toho.co.jp/movie/lineup/shinchan-movie2020.html

©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

映画『クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』の感想

こんにちは。空飛ぶ人です。みなさんはクレヨンしんちゃんってテレビのレギュラー放送観てますか?僕は毎週必ずというわけではないですがちょくちょく観ています。もちろん子供向けの内容なんですけど、皮肉が効いていて大人も楽しめるんです。結構クオリティが高くて毎回笑ってしまいます。

一方映画クレヨンしんちゃんはあまり良い印象がなくて、大人に媚びてる感じがあざといなと思っていましたが、今回の作品はもちろん子供が笑ってドキドキして楽しめる内容でありながら、大人に対してはとても厳しいメッセージ性も持つ作品だったなと思います。同時に、見終わった後全ての子供たちが愛おしくなる映画でした。

 

監督:京極尚彦

公開日:2020年9月11日

鑑賞日:2020年9月20日

おすすめ度:★★★★★★★★(8/10)

<あらすじ>

自由なラクガキをエネルギー源として空に浮かぶ王国「ラクガキングダム」
しかし、今やエネルギー不足により滅びようとしていた…。王国軍は、無理やりラクガキをさせるため地上・春日部への進撃を開始!
一方、描いたものが動き出す、王国の秘宝「ミラクルクレヨン」を与えられし勇者は…まさかの“ちょ〜お気楽5歳児”野原しんのすけ!!

しんのすけと、描き出したラクガキたち
“ほぼ四人の勇者”は春日部奪還を目指す!
そんな最中、ラクガキは水に濡れると溶けてしまうという弱点が発覚!さらに上空には今にも降り出しそうな雨雲が…
果たして、ラクガキたちとの出会いと冒険の先に待つのは、笑いか!?涙か―!?

世界を救え!“クレヨンの勇者”しんのすけ!!

引用:https://www.shinchan-movie.com/

映画公式WEBサイトより


『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告2【9月11日(金)公開】

<感想>

仕事帰りの17時過ぎの回で鑑賞しましたが、時間的に客層は家族連れ半分、大人の一人客半分くらいのバランスでした。
映画館で家族で映画っていいですよね。子供の頃に連れて行ってもらった映画って大人になっても覚えているものです。いつもはケチな親にポップコーンとジュースを買ってもらって、ちょっと緊張しながらお利口さんにするという映画体験。ささやかながら一生ものの思い出になるはずです。

 

さて、冒頭に書きましたが僕はクレヨンしんちゃんはレギュラー放送派で、映画版は全て観ているわけではないので他の映画版と比較してどうこうという感想は書けませんが、「春日部を救う」という今回の大目的、懐かしのぶりぶりざえもんの登場、集結するお馴染みのキャラクターに、「クレヨン」で2つの世界を救おうと走り回るしんのすけと、今回の映画は「子供」に焦点を当てた集大成的な内容だったのかなと思っています。

重要なキャラクターの一人「ユウマ」がとても印象的でした。この物語はユウマが”子供に戻る”物語でもあるんですよね。
ユウマの母親は相模湖湖畔で居酒屋を経営するシングルマザーです。母は6歳のユウマを一人置いて祖母の住む春日部に出かけます。その家庭環境からユウマはとても冷静で大人びた性格をしており、なかなか戻らない母を心配しながらも泣いたり取り乱すことはありません。ユウマは早くにして子供であることを卒業せざるを得ななかった子供なのです。そのユウマはしんのすけ達と出会うことで春日部の状況を知り、しんのすけ達と共に母を救うべく春日部に向かいます。

ラクガキングダム に侵略された春日部に敷かれた交通規制、春日部に向かう自衛隊と、これまでのクレヨンしんちゃんでは観たことのないシビアな描写にギョッとしました。その後に描かれる春日部市民の混乱も観ていて非常に不安を煽るものでした。

こういった生々しい描写をあえて入れたのは、現実の今の子供達の置かれている状況が、待った無しの非常にマズイ状態だという制作側の危機感の表れなのだと思いました。

皆で協力しあって落書きをすれば、春日部もラクガキングダムも助かるのに、子供の言うことに耳を傾けずに、ヒーローとしてしんのすけを持ち上げて、責任を全部押し付けて、我先に逃げようとする大人達。誰かの犠牲の上で救われたはずなのに、自分たちは助けてもらう側の市民だと立ち向かうことをしない。結局春日部を救おうと行動を起すのは、しんのすけをはじめとした子供達でした。春日部を救うために次々と犠牲になっていいった勇者たちとの別れの悲しみを怒りに変える事なく最後まで諦めようとせずに「ほほほ〜い」と走り出すしんのすけの姿に、胸が熱くなり、同時にとても苦しくなりました。

子供たちが子供でいられない状況を作っているのは、国のせいでも時勢のせいでもなく、大人一人ひとりが「他人ごと」と逃げているせいではないのかと言われているようで、自分自身、深く反省させられました。

 

冒険の途中、しんのすけに対して無償の愛を向ける偽ナナコがみんなのためにビワを剥くシーンで、しんのすけだけがそれに気が付いて偽ナナコにビワを「食べな」と手渡しするシーンも印象的でしたね。僕たちが享受して当たり前だと思っている安全や幸せを守っているのもまた人間なのだと、僕たちは気づいていながら見て見ぬふりをしていますが、しんのすけはそれに気が付いて、優しさを返します。
「しんちゃんは優しくていい子ね」で済ますのではなく、本当は誰もが持ち合わせるべき優しさなのだと思いました。

 

最後に、エンドロールで劇中に登場する落書きは実際に春日部市の小学校の生徒が描いたものと明かされるのですがそれも胸熱でしたね。最高の春日部市民映画だと思います。きっと春日部市の人たちは誇らしい気分になったでしょうね。
僕はこの映画の向こうに、無数の実在する子供たちが存在するのだと言う事実に、終演後同じ劇場に居合わせた見知らぬ他人ん家の子供がむちゃくちゃキラキラして見えてしまいました。
お子さんがいる方は是非一緒に見にいって欲しいですね。

www.shinchan-movie.com

 

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