映画『月光の囁き』の紹介
こんにちは。空飛ぶ人です。普段は主に新作映画の感想を書いていますが、今まで観てきたものの中で印象に残った映画もご紹介していこうかと思います。ネット上に山ほど感想やレビューはあると思うので、今さら書く理由も薄いのですが、読んでいただけると幸いです。
皆さんは人生に影響を与えた映画ってありますでしょうか。誰しも多かれ少なかれ、中高生のころは読んだり見たりしたものの影響をダイレクトに受けてしまうものだと思うのですが、僕にとって明確に自己形成に影響を与えたのが『月光の囁き』です。
<作品情報>
・監督:塩田明彦
・原作:喜国雅彦
・公開:1999年
・出演:水橋研二 つぐみ 草野康太 他
<あらすじ>
高校三年生の夏。好意を寄せあいつつ、同じ剣道部の仲の良い友人としてふるまい続けてきた、北原紗月と日高拓也は、ちょっとしたきっかけからようやく想いを通 いあわせた。
自転車二人乗りでの登校、図書室でのデートと夢見ていた通りの交際に、はしゃぐ紗月。一方、拓也はそうした普通の恋愛では満たされない想いを、秘かに紗月の身の周りの物(使ったティッシュ、ブルマーそしてルーズソックスなど)を集めて慰めていた。
そんな拓也の行動を知った紗月は戸惑いながらも、強く反発し始める。しかし、嫌えば嫌うほど、いじめればいじめるほど、マゾヒストの拓也はひたむきに紗月への想いをつのらせてゆく。引用:http://www.bitters.co.jp/filmbook/gks/gks_str.html
BITTERS END作品情報より
<この映画を見るには>
残念ながら現在配信はされていないので、DVDレンタルか購入するしかありません。
<感想>
大人であれば誰しも、家族や恋人友人にも隠している秘密や自分の側面を持っているものだと思います。しかし思春期は恋をするとそういったものを飛び越えて「分かりあえるはず「相手を知りたい」「自分を知ってほしい」という感情を抱きますよね。未熟な恋愛はそういう察しや思いやりを飛び越えた図々しい愛情から上手くいかなくなるもです。
この映画はそういう若さゆえの身勝手な恋愛感情に主人公 拓也の「マゾヒズム」という性癖を上乗せすることで、思春期の恋愛の痛みと純粋さをわかりやすく描いた傑作だと思っています。
痛みというのは身体的にも精神的にも一番強い刺激だと思います。拓也は思いを寄せる北原に苦しめられることが一番ダイレクトに北原を感じられることに気がつき、身勝手な行動が加速していきます。
相手を傷つけながらも「僕をわかって!」と叫び続ける拓也は側から見るとただの「変態」ですが、鑑賞当時中学生だった僕にはとても純粋なものに映ってしまいました。愛する相手にさえも忖度しない自分の愛をぶつけ続ける姿が非常に健気に見えたのです。
大人になった今も、この映画を「身勝手でブザマ。これは愛ではない。」と切り捨てることはできません。
今はもう取り戻せない20年前の夏の街並み、主演の水橋研二の繊細な目線の演技、ヒロインを演じたつぐみの命を削るような怒号、予想だにしなかったスピッツの爽やかすぎるエンディング曲、全てが印象的で、今でも僕の中の最高の純愛映画だと思っています。
ぜひ、機会があれば観てみてください。