空飛ぶ映画レビュー

主に新作映画の感想を綴ります。

映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の感想 日本でいちばんやさしい生霊

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©2020『宇宙でいちばんあかるい屋根』製作委員会

『宇宙でいちばんあかるい屋根』の感想

監督:藤井道人

公開日:2020年9月4日

鑑賞日:2020年9月6日

おすすめ度:★★★★★★★(7/10)

 

期待半分、「地雷映画では?」という不安半分で鑑賞してきました。テレビドラマ『俺の話は長い』での好演が印象的だった清原果耶ちゃん初主演ということで、期待。しかしあらすじを見ると、

空を見上げたつばめの目に飛び込んできたのは、星空を舞う老婆の姿!? 

https://uchu-ichi.jp/ 公式WEBサイトより引用

 うむむむ・・・。児童文学感が凄い!30歳すぎたおじさんが入り込めるか非常に不安だぞ!!

<あらすじ>

お隣の大学生・亨(伊藤健太郎)に恋する14歳の少女・つばめ(清原果耶)。優しく支えてくれる父(吉岡秀隆)と、明るく包み込んでくれる育ての母(坂井真紀)。もうすぐ2人の間に赤ちゃんが生まれるのだ。幸せそうな両親の姿はつばめの心をチクチクと刺していた。しかも、学校は元カレの笹川(醍醐虎汰朗)との悪い噂でもちきりで、なんだか居心地が悪い。つばめは書道教室の屋上でひとり過ごす時間が好きだった。ところがある夜、唯一の憩いの場に闖入者が――。空を見上げたつばめの目に飛び込んできたのは、星空を舞う老婆の姿!? 派手な装いの老婆・星ばあ(桃井かおり)はキックボードを乗り回しながら、「年くったらなんだってできるようになるんだ――」とはしゃいでいる。最初は自由気ままな星ばあが苦手だったのに、つばめはいつしか悩みを打ち明けるようになっていた。

引用:https://uchu-ichi.jp/ 
映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』公式サイト


映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』本予告 9月4日全国公開

<感想>

 久々に映画観て泣いてしまいましたよ。おそらくこの映画、嫌いな人はびくとも心動かないかもしれません。単純・平凡な感性しててよかった。
序盤こそテンプレみたいなどこかで観たようなストーリー、突然のファンタジーに、「お、おぉ・・・」と若干引いてしまいましたが、中盤あたりの展開から僕の中の少女が、「星ばあ!!」と、足の綺麗さが明らかに一般人のそれじゃない桃井かおり演じるおばあちゃんにすっかりなついてしまいました。

若干斜に構えて観始めた自分の鎧が、清原果耶ちゃんの新鮮で純真無垢ながら、主演女優として肝の据わった気合のある演技にゆっくりと剥がされてしまいました。
まるで女子高生同士のようにはしゃぐ つばめと、星ばあ。水族館のシーンの美しさよ!!

こういう、現実の世界に若干のファンタジー味が混じるお話って、たぶん映像にするのって難しいのだと思うんですよね。以前鑑賞した映画『まく子』は、親子のエピソードが良かっただけに、クライマックスのファンタジー全開シーンは完全に”ぽかーん”としてしまいましたし。

なぜこの映画は違和感なく楽しめたのかなと考えるに、理由の一つとしては、この映画がシネマスコープサイズであることが要因としてあるのかなと思います。

シネマスコープサイズ(シネスコ)は一般のワイドよりさらに横長の画面比なのですが、昔フィルムを節約するために1コマを横にぶった切って2コマとして使ったことに由来します。横に長いので、映画館で観る場合、画面端に人を置いたら、反対側は目に入らなくなります。
主人公つばめと、星ばあ がビルの屋上で2人で過ごすシーンはほとんど2人を画面中央に置いたショットが多かったように思います。そのため2人のシーンはスクリーンの端を感じさせず、グッと物語に入り込めた気がしています。
(一方家族と過ごすシーンなどはそうでもなかったように思います。)

 

ありふれているようで、とても丁寧に作られた映画でした。一人の少女がどこか不思議な人物との出会いで成長していく(しかもひと夏で!)という物語のお手本みたいなストーリーで、そつがない。子供の頃に読んだ『夏の庭(湯本香樹実 著)』を思い出しました。
ただなんともファンタジーな感じが中学2年生という主人公年齢的に多少無理が無いか?とは思いましたね。出てくる人がみんないい人、毒や裏ががないというのも物足りない感じがしてしまいました。

中学生のころ、担任の国語の先生がやたらと授業で映画を見せる先生だったのですが、まさに中学生に観てほしい映画ですね。大人もつばめの成長を見守る親の立場で非常に共感できます。

 

出演者についてですが、水野美紀、坂井真紀と出てきて「おお!リーチ!」と思ったのですが酒井美紀さんは出演されていません。
坂井真紀の演じるつばめのお母さん(継母)はほぼ「天使」と呼んでも差し支えないくらい出来たお母さんなのですが、妙に納得できるのは、薄化粧で皺が出てきてもいつまでもチャーミングな坂井真紀さんの魅力にあったと思います。つばめとぶつかり改めて”親子”になるシーンでは思わず涙してしまいました。語り過ぎない表情の中に、ちゃんと温度を感じて、こりゃ玄人技ですわ!とあっぱれ。

主演の清原果耶ちゃんは多少役柄と実年齢に無理があるなと感じましたが、憧れと恋をごっちゃにしてお隣のお兄さんに顔を赤くするかわいらしさを持ちながら、実は複雑な家庭環境に悩む ”ザ・少女” な役柄を見事に演じていたと思います。序盤の人の目を意識しながらも漏れ出る無邪気さだったり、成長して表情が変わっていく様の演じ分けに、雰囲気だけの女優さんではないんだなと思いました。桃井かおりのテンションに引きずられずに臆せず彼女っぽい受け答えしているところに「私の映画!!」という気の強さも見えましたね。
個人的には笑顔より、不愛想な表情やセリフが似合うなと思っています。『俺の話は長い』の役柄が本当に当たり役でした。この映画で言えば、憧れのお隣のお兄さんにときめいているシーンより、(おそらく気の迷いで付き合った)やんちゃな元カレと接するときのぶっきらぼうな物言いや、不機嫌な態度の方が彼女の魅力の真骨頂な気がします。彼女のいろいろな表情が観られたという点では「アイドル映画」としても成功していると思います。

そして何より!!!お初にお目にかかりました「醍醐虎汰朗」くん

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引用:https://uchu-ichi.jp/  映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』公式サイト

顔面がめちゃくちゃかわいいのはもちろんのこと、ラスト近くの演技に魅了されました。好きな女の子(つばめ)を目の前にした時の小中学生特有の天邪鬼な態度と、漏れ出る好意。こういうのって、下手な人が演じると観てられないのですが、抑えきれない「好き」が漏れ出る演技が素晴らしかったです。

ファミレスのシーンはあることを理由に開き直って声色が完全に恋する男の子で、そんな場面はないのに「星ばあの言った通り、こいつ、めちゃくちゃいい奴なんだろうな」と観客を納得させてくれます。あぁもっと彼のことを見ていたかったです。これは恋です。
勉強不足ですが、『天気の子』の主演だったんですね。興味が無かったのですが観てみたくなりました。今後のご活躍に期待します。

 

最後に、伊藤健太郎くん、働き過ぎじゃない!? 

 

uchu-ichi.jp

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