空飛ぶ映画レビュー

主に新作映画の感想を綴ります。

映画『マティアス&マキシム』の感想 どっちがマティアス?どっちがマキシム?とりあえず仲間って最高じゃね!?

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映画『マティアス&マキシム』の感想

皆さんこんにちは。空飛ぶ人です。

あんまりよろしくない角度で騒がれてしまっている『マティアス&マキシム』を観てきました。人の名前を覚えるのが苦手なのでしばらく「どっちがマティアスで、どっちがマキシムなのよ!!」状態でした。しかもマットって呼んだり、マックスって呼んだりするもんだから、こんがらがっちゃう。頭悪い自分が悪いんですけど。

表現的にも本筋と関係ない会話とか、詩的で綺麗な映像での心理描写が多いので、苦手な人は苦手かもしれませんし、ストーリー的にもいい大人なのに煮え切らず子供っぽい態度をとってしまうマティアスにイライラして「もう!踏んずけてやる!!」って気分になる人もいるかもしれません。

ただ率直な感想を言うと、「友達めっちゃいいやつじゃん!30歳でこんな仲間がいたら勝ち組だよな。」と、爽やかな印象の映画だったので、詩的な映像をただただ見せ続けられる2時間だと思って尻込みしている人にはそんなことはないよ。と言いたいです。

 

公開日:2020年9月25日

鑑賞日:2020年9月27日

監督:グザヴィエ・ドラン

おすすめ度:★★★★★★(6/10)

 

<あらすじ>

30歳のマティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)とマキシム(グザヴィエ・ドラン)は幼馴染。その日も一緒に仲間のパーティへ向かうが、そこで彼らを待ち受けていたのは友達の妹からの、あるお願い。彼女の撮る短編映画で男性同士のキスシーンを演じることになった二人だが、その偶然のキスをきっかけに秘めていた互いへの気持ちに気付き始める。美しい婚約者のいるマティアスは、思いもよらぬ相手へ芽生えた感情と衝動に戸惑いを隠せない。一方、マキシムはこれまでの友情が壊れてしまうことを恐れ、想いを告げずにオーストラリアへと旅立つ準備をしていた。迫る別れの日を目前に、二人は抑えることのできない本当の想いを確かめようとするのだがー。

映画「マティアス&マキシム」公式サイト 2020年9/25公開


グザヴィエ・ドラン監督&出演!映画『マティアス&マキシム』予告編

 

<感想>

同性愛の映画を「普遍的な愛を描いた映画」と言うとすごく怒る人たちがいるのですが、この映画は「普遍的な葛藤を描く映画」だと思いました。
設定としては男同士でないとあり得ない話ではありますが、全てが順調な時に、どうしても惹かれてしまう他者が現れて、そこに踏み込むには代償とするものが大きすぎるとしたら、自分の気持ちに嘘がつき通せるのか。という点においては誰しもが経験しうる状況ですし、大なり小なり誰しもが似た体験をしたことがあるのではないでしょうか。

マティアスの自意識過剰になってマキシムを遠ざけてしまう行動や、抑えられない自分の感情を隠すために周囲に攻撃的になってしまうサマは、自分の見られたくない部分を見ているようで、痛々しかったですし、それでもマキシムが気になって猫のようにすり寄っていくサマはめちゃくちゃ笑えましたね。「20代前半で済ませておけよ」と思いましたが。

まだ大人になりきれずに、不器用に一途にしか人を思えない故に苦しんだ先に、最高の結末が待っていて救われました。
対比として出てきた、欲望に従順でなんでも上手くやろうとするバイの弁護士の行く末が今は心配です。

 

僕としてはこの映画で一番心揺すぶられたのは、主人公2人よりも、それを取り巻く周りの人たちの優しさでした。

特に、仲間は薄々2人が思い合っていることにに気がつくのですが、核心には触れずに時々茶化しながらも優しく2人の行く末を見届けるのです。(最後の最後に最高のお節介をやってくれますが)
みんな「こいつら仕事してんのか?」というような風体をしており、30歳にしては言動も子供なのですが、スーツをバリッと着こなすマティアスよりも何倍も大人なんですよね。「他人のことは分かるけど、自分のことは分からない」という男の子あるある満載で、いい仲間だなと、羨ましくなりました。30歳でああいう仲間が今も側にいるっていうのは勝ち組ですよね。
マティアスのお母さんも、家庭環境が複雑なマキシムのことを実の息子みたいに暖かく見守ってくれていて、最後の登場シーンではこちらが泣きそうになりました。

 

音楽が素晴らしくて、詩的な映像も合間って、すごく高尚な映画みたいな評判だったんですが、僕的には「いいラブコメだったな。」という感想です。

二人がキスをするきっかけになった友達の妹や、ザ・アメリカンな欲望に従順な弁護士、おばちゃん軍団に、マティアスとマキシムの友人たち。個性豊かな登場人物が出てきて随所に笑わせようとするシーンがあり、劇場で笑い声が上がったシーンもありましたが、どうしても「高尚な映画よ!」という本作の佇まいの前に、笑い声を押し殺した感じに。なんだかどちらにも振り切っていない感じが少し勿体無かったかもなと思いました。
これは、監督と作品への冒涜だ!と怒られてしまうかもしれませんが、Netflixとかで、コメディ版のテレビドラマ化とかしたらめちゃくちゃ面白くなるだろうなと思います。(映画のいいところ死んじゃうかもしれませんが)

ちなみに問題になった”宣伝*”に対する私の意見は↓のような感じです。

*ポスターを男女に置き換えた漫画『溺れるナイフ』とのコラボポスターが問題に

本編への冒涜だと怒ってるんですかね?LGBTへの配慮が無いと怒ってるんですかね?映画を見た上でLGBT当事者が怒るんだったら分かるんですけど、本当にそうかな。。。

 

phantom-film.com

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