空飛ぶ映画レビュー

主に新作映画の感想を綴ります。

『のぼる小寺さん』の感想 工藤遥ちゃんの佇まいが最大の魅力

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*引用:wwws.warnerbros.co.jp 映画公式WEBサイトより

『のぼる小寺さん』の感想 ほぼネタばれなし

壁の前では手も足も塞がるから お手手つないでいられない

のほほんリラックス系ムービーと思いきや、熱血青春映画の傑作だった。

主演の工藤遥ちゃんの凛とした姿に、気が付くと観客も皆彼女の背中に夢中になる。彼女の佇まいがこの映画最大の魅力。

 

監督:古厩智之『ロボコン』『ホームレス中学生』

公開日:2020年7月3日

鑑賞日:2020年8月10日

おすすめ度:★★★★★★★★★

 

<あらすじ>

――彼女がなぜのぼるのか、僕には“まだ”わからない。
教室。ひとりぼっちの近藤は、暇つぶしに携帯をいじっている。

体育館。
卓球部の近藤が隣をみると、小寺さんが上を目指している。
近藤は小寺さんから目を離せなかった。

放課後。
教室に小寺さん、近藤、四条、ありかが残される。
「進路調査票、白紙なのお前らだけだぞ」担任の国領が紙を広げる。
不登校気味の梨乃が遅れてやってくる。
「お前、めちゃくちゃ遅いよ!」あきれる国領。

クライミング部の隣で練習する卓球部の近藤、クライミング部の四条、ネイルが趣味で不登校気味の梨乃、
密かに小寺さんを写真に収めるありか。
小寺さんに出会った彼らの日常が、少しずつ変わりはじめる――

http://www.koterasan.jp/

 

 


映画『のぼる小寺さん』90秒予告編映像

 

<感想>

そろそろ劇場での上映が終わってしまうタイミングで言うのもなんですが、近くでまだ上映しているのであれば、絶対見てほしい!!たまたま上映時間と暇な時間が合ったので、前情報一切無しになんとなく観たのだけれど、今のところ今年一番の映画だと思う。

 

タイトルロールの小寺さんの生き方に周りが感化されて変わっていくという、横道世之介的な、町田君の世界的な物語。最初は単なる不思議ちゃん。実際にクラスメイトにも「不思議ちゃん」と陰でささやかれるが、周りのことはお構いなしにクライミングに没頭するその姿に、他の登場人物たちも観客もいつの間にか夢中になってしまう。それが成立するには、この「小寺さん」が魅力的に見えなければいけないのだが、小寺さんを演じる工藤遥ちゃんがとにかく素晴らしかった。

彼女の演技がこの物語を説得力あるものにしていると思う。

ボルダリングの経験はないので、経験者からしたらいろいろとおかしな部分もあるのかも知れないが、とにかく工藤遥ちゃんの身体能力よ!!軽々と足を振り上げ、壁を登っていく姿は圧巻。知らなかったけど、元モー娘。なのね・・・。さすが元アイドル、メンタル・フィジカルともにしっかりしてらっしゃる。

声もよかった。他の役を演じている彼女を知らないので、彼女の素に近いのか、キャラクターに寄せているのかは判らないが、人に媚びない声色、だけど決して人に興味が無いわけではないやさしさがこもったトーンの落ち着いた声。「こんな子がいるのか!!」とおそらく業界騒然だと思う。映画は初出演ぽいので今後の活動に期待したい。

クライミングをする表情もキラキラしていて、思わず「頑張れ!」と応援をしたくなる。

 

しかし「自分は人を応援できるほどに、目の前のことを頑張れているか」。

そんな自問自答に襲われる。頑張っている人に「がんば!」と言う権利があるのだろうか。

 

小寺さんを見つめる周りの人たちもそんな自問自答の上、自分のすべきことに向かっていく。

 

のほほんとしたトーンで進み、くすっと笑ってしまうようなシーンが続くが、メッセージは非常に厳しく、ストイックなものだった。

 

後半、おそらく見ているほとんどの人が「え?ちょっとひどくないかい?」と思ってしまうようなシーンがあるのだけど、同調圧力や馴れ合いを抜け出し、孤独に登るべき壁を登り始めた伊藤健太郎のその選択は、彼の成長の証だったのではないだろうか。

小寺さんの前に立ち、「俺を見てくれ」と言う権利を手にするにはその選択が必要だったのだと思う。

(他の登場人物たちも同じように、仲良しこよしを卒業して一人で壁と対峙する。しかし、クライマックスで小寺さんに「ガンバ!」と声をかけるシーンは孤独には見えない。)

 

ラストシーンはまぶしさの中、背中に体温を感じるような青春映画の名シーンに仕上がっている。寄りかかった小寺さんもまた、伊藤健太郎との出会いで少し変わっていったのだな。

鑑賞した映画館の客は自分を含めてほとんどがいい大人だった。きっと頑張り始めるのに遅いことは無いよな。と自分に言い聞かせて、とても前向きな気持ちで映画館を出た。

 

以上が感想。

 

工藤遥ちゃんばかり褒めたけど、伊藤健太郎のあの初々しさって何なのだろう。

首のイボは早くとった方が良いと思うど、むちゃくちゃかわいい。

覚醒してから、卓球に打ち込む姿は、小寺さん同様に応援したくなるほど本当に良かった。

 

あと、監督が古厩智之だということはエンドロール流れるまで知らなかった。古厩監督作品は『まぶだち』『ロボコン』の2本しか見たことないけどこの2本は忘れられない映画の中の2つ。私は古厩監督がすごく好きなのかもしれない。ほかの作品も見てみたい。

 

とにかく、前向きな気持ちになれるので、すべての人におすすめしたい。

 

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